日銀の量的緩和策に伴うインフレ予測

●結論
日本でも数年先に大きなインフレが起こるだろう。ただし、どの程度までインフレになるかはわからない。

以下、なぜ日本でインフレが起こるかを「金融」と「国際政治学」の理論から説明していきます。

●叩き台として、ニューホライズン キャピタルの安東泰志氏による6つの経済情勢に関する近未来予測の要約を引用し、下記に私のコメントをつけました。
1『ユーロは当面維持されるが、年内にギリシャの離脱と同国がデフォルトに陥り新たな政策対応を迫られる。』
 →時期はさておき同意です。

2『ドル円相場は当面は円高傾向だが、日銀の国債買い入れの大幅増額表明を契機に、いずれは90円をはるかに越える円安に向かう。』
 →懐疑的です。FRB米国債を買い取る額は、日銀が日本国債を買い取る額以上になる可能性が非常に高いからです。アメリカの債務は地方中央政府だけではなくて、民間のデリバティブ商品の損失があります。表立って論じられませんが、こちらの支払額が本当は遥かに大きいです。日本はバブル崩壊の余波があったからか、欧米に比べてデリバティブ商品の保有額が少ないのです。この違いを見誤ると、前提を誤ってしまうので注意してください。

3『消費税増税法案は、与野党の反対議員によって骨抜きとなり日本国債の格下げと金利の上昇(価格の下落)が起こる。』
 →消費税増税法案は、通ると思います。社会保障費の財源を確保するためには増税が、他のインフレ税に比べて、官僚が利権を確実に確保できるからです。日本国債の格下げと金利の上昇(価格の下落)は起こると思います。

4『その場合、日本国債の格付けは2段階以上の引き下げに直面し、銀行などによる狼狽売りから、一気に値を崩すことになって、円・債券・株式のトリプル安となる可能性が高い。』
 →海外のヘッジファンドと銀行を含めれば同意ですが、日本の銀行に限っていえば懐疑的です。銀行は狼狽売りしないと思います。
日本政府と銀行は談合しているからです。民間銀行は日銀から無限に資金を供給してもらえるので、売る必要がありません。
売り崩すとしたら、海外のヘッジファンドか海外の金融機関でしょう。

5『日銀は国債の買い入れ額を大幅に増額すると共に、いざという時には新発債の引受もやむを得ずとの立場を表明する。』
 →同意です。

6『公的年金を原資とする日本版SWF構想が具体化する。』
 →知識がないため判断不能です。

●大きなインフレが来ると想定する2つの根拠
1 欧米は国債価格を維持させるために、日本にインフレ圧力をかけさせるのではないか?
アメリカと欧州はデリバティブ証券の損失額約4京円(推定)をまだ支払っていない。おそらく4000兆円程度(推定)を支払う必要があるだろう。
そのため、アメリカも欧州も量的緩和政策を今後進めていくはずだ。ただし、無尽蔵に量的緩和政策を続けていけば、通貨の価値が下がり、それに伴い国債価格も下落する。
だから、欧米にとっては、他の国も量的緩和政策をとらせ、通貨安に誘導させられれば、相対的にドル・ユーロの下落率は緩やかになり、合理的である。
歴史を振り返れば、日本の近代史は、欧州の支援による近代制度導入から米国依存による経済成長まで、欧米の対外政策に依存してきた。今でも日本の対外政策はアメリカに依存しているため、独自での対外政策をもたない。そのため、「外務省・財務省・その他省庁」や「テレビ・新聞」は米国政府から圧力をかけられても抵抗できず、前向きに量的緩和策の話に乗ると想像できる。
従って、日本政府は円安に誘導すると、私は予測している。


2 インフレ税は「年金や医療の社会保障の財源確保」と「政府債務削減」のため日本政府にとって合理的
日本政府にとってみても、GDP2倍の規模の政府債務を減額させることは、欧米と利害関係が一致しているのもポイントだ。最悪の場合、日本政府は増税とインフレ税の二重の圧力を国民にかけてくるかもしれない(これで社会保障の財源を確保するため、低収入層にとっては吉かもしれないが)。
政府債務を削減するためにはインフレ税が好都合なのだ。歴史的に日本や欧州がとった政策を思い出すのもいいかもしれない。第二次世界大戦、既に欧州では政府債務が膨らんでいた。欧州は戦時国債を刷りまくった。
日本は戦時国債を増刷し、ハイパーインフレで5年で物価が100倍になった。政府債務をインフレ税でなし崩しにする政策は、歴史的にみれば常套手段だ。
現在、イスラエルがイランに攻撃しようと仕掛ける準備を進め、アメリカ国内のイスラエルロビイストアメリカ政府がそれを支援するように誘導している状況だ。中東で戦争が起これば、景気刺激策ともなり、なし崩し的に量的緩和をさらに進める都合のよい理由にもなるはずだ。


※ シーレーンが封鎖される危険性にも注意
話は逸れるが、ここで世界情勢が緊迫する中で、日本が注意する必要があるのが、資源の輸入の制限だ。
第二次世界大戦で日本が米国と戦争を始めた決定的な要因は資源の輸入停止(海上封鎖)だった。
現在もイラン情勢は緊迫化しているが、日本はホルムズ海峡経由に資源を依存しているため、ここのシーレーンが封鎖されてしまえば、日本の国家的危機に波及することは理解してほしい。とりわけ過激な反社会的勢力には要注意だ。さらに注意すべきなのは、諜報機関は敵国に不利になるように、敵国と敵対している反社会的勢力を支援して、間接的に攻撃をしかけることをする。日本も、インド独立支援を支持するために、チャンドラボースを支援した。最近でも、CIAがは中国を牽制するために、チベット民主化ダライラマを支援をしていた。
すなわち、日本に圧力をかける殿下の宝刀を、欧米は外交カードとして利用できるということだ。


※理論的には、量的緩和策が、インフレを引きこさない可能性もある。 野口教授の理論から。
原理的には買いオペしたからといってマネーサプライが必ず増加するではないため、必ずインフレが起こるわけではない
例えば、インフレ税で賄った財源を社会保障(年金)に回せば、インフレは起こらない。年金が預金に回り、国債の再購入に当てられる。
しかし、政府が景気刺激策を取らないことはありあえない。不況下、まして世界的な不況下では、政府主導によるケインズ政策も、民間への貸出優遇政策も有効な手段になりえるからだ。歴史上、日本政府が不況下に景気刺激策をとらなかったことはない。

●インフレのメリット
インフレが起こったらどうなるのか?

・老人から政府への資金移動
外貨預金を除いた現金・預金が1264兆円が、インフレにより相殺される。日銀による民間銀行からの国債買い入れをしているため、資金は政府へと移動される。

・政府債務の削減
国内債券が1148兆円分あるが、これがインフレにより相殺され、政府債務は削減される。

・円安誘導により輸出企業の業績アップ
トヨタソニーパナソニック、日立、コマツ東レ、など外需企業が円安の恩恵を受け業績アップ。

●インフレにおるリスク
1 ヘッジファンドが日本国債空売りをしかけてくるかもしれない
通貨を刷れば日本国債の価値は下落する。日本の国債の6割は国内投資家が保有しているから安心だとも言えない。イタリアも10年以上は8割以上の国債を国内で保有していたことを考えると明日は我が身だ。円安が続けば国債の価値が下落するためヘッジファンド空売りをしかけられるリスクが出てくる。そうなると、日本国債暴落もありえる。ただし、日本国債暴落を始めると、日本銀行が買いオペを強化し、ヘッジファンドに対抗するだろう。その結果、最悪の場合には、ハイパーインフレレベルも想定できる。
(そう考えると増税をすることは、「政府債務減少」「社会保証費確保」ができるため、国債価格下落=ハイパーインフレ防止効果もあり、一概に否定もできないかもしれない。あるいは通貨切り下げやっちゃえばいいという声もあるかもしれないw)


2 民間銀行も国債を売るかもしれない
日銀と日本の民間銀行は談合しているので、あまり可能性は高くないと考えますが、民間銀行による国債売りも考えられます。ゆうちょ銀行も民営化したため、日本国債を売却するることも可能です。
一番ありえるのは海外金融機関でしょう。日本国債の格付を下げられたら売り浴びらせられる可能性があります。


3 為替リスク
・円建て金融商品の価値下落。外国投資していた場合にリスク高い
・過度な円安誘導による、海外進出を減速させる(ただし国内雇用を伸ばすのでこれはメリットになりうるかも)
中央銀行が民間銀行に貸出し、民間銀行が貸出先を決めるため、恣意的で不公平なものになるリスクもある。
(かといって不況時にはケインズ政策が有効なので、同じ政府主導なら官僚主導の場合も、談合が行われ不公平・非効率になるリスクもあるのだけどww)
・輸入インフレ。日本は資源の自給率が低いため、資源価格高騰は痛い。飲食業、電力企業、資源輸入に頼る内需企業は業績がダウンする。


4 円の購買力低下
当たり前だが日本人全体で購買力が下がる。円高のため、海外輸入品が安く変えていたが、円安誘導されると、海外輸入品が高騰し民間の購買力は低下する。


●不動産投資について
不動産を買うか悩んでいます。
結論としては、政府が増税をするのであれば見送り、インフレ税だけで政府が財源を賄おうと判断しているのであれば、買いです。どちらも実行するのであれば、状況により判断を下します。
まあ、不動産投資をするには税制の理解、個別物件判定、銀行からのローンの組み方、売却方法、運用会社選定などにも勉強しないといけないので、未だ買える段階ではないのが実状です。

不動産投資をするにあたってリスクとして5つ考えています。
1 福島原発の影響が数年後に現れて東京の地価も下落要因になる。
2 大震災(1回当たりの補修費用は平均60万円程度の負担になる予測)。
3 日本では大きなインフレが起こらないかもしれない。
4 長期的に日本は人口減少に向かうため、インフレを考慮しない地価の上昇要因はあまり見込めない(ただし東京は微増傾向にある)。
5 増税増税されると売却時に利益が随分と減る。

問題は3と5です。
5は5%程度の増税であれば問題ないですが、20%以上も上げられると、買う気力がなくなります。
ただす、年率7%程度のインフレが10年以上続くような状況になると買いです。
この規模のインフレが来れば、他の考慮しても十分なリターンが見込めるからです。

※どなたか不動産投資に詳しい方がいればアドバイス下さい。


●参考 下記3大メガバンク+ゆうちょ銀行だけでも日本国債の約7割は日本が購入していることがわかる。
・2012年 国債保有
三菱UFJ: 約48兆円
みずほ: 約34兆円
三井住友: 約28兆円
ゆうちょ銀行:146兆円(2011年3月末時点)
3大メガバンク+ゆうちょ銀行の国債保有高合計:256兆円

海外債券保有高全体:約91兆6391億円
※中国・英国・米国で40%以上を占めている。

・日銀のサイトにある国際収支統計(2011年末のデータ)
以下は主な日本の債券保有国。

国、日本の債券保有額、うち中長期債、短期債
中国、17兆9538億円、5兆6603億円、12兆2935億円
英国、11兆4884億円、8兆8948億円、2兆5936億円
米国、10兆1153億円、6兆4807億円、3兆6346億円
ルクセンブルグ、7兆2234億円、1兆3994億円、5兆8241億円
フランス、5兆2799億円、3184億円、4兆9615億円
シンガポール、4兆7653億円、2兆6709億円、2兆944億円
ベルギー、4兆1388億円、2兆4101億円、1兆7287億円
ケイマン諸島、3兆4486億円、2兆4590億円、9896億円
スイス、2兆6624億円、2兆3974億円、2650億円
タイ、2兆434億円、3262億円、1兆7172億円
サウジアラビア、1兆9153億円、1兆8985億円、168億円
カナダ、1兆4355億円、1兆645億円、3710億円
香港、1兆3820億円、5343億円、8477億円
アラブ首長国連邦、1兆3612億円、3871億円、9741億円

国際機関、5兆9310億円、5648億円、5兆3661億円