エア・パワーは今日のアメリカの戦略における最先端を担っているか。

6月17日に奥山先生による地政学ゼミに参加して参りました。今回はエア・パワー/スペース・パワーと核戦略について議論してきました。私が発表に使った文章を、議論の結果を踏まえて修正して記載致しました。まずはエアパワーについてです。はてなダイアリーのシステム上1日に複数回分に分割でいないため、日時が異なりますが15日、16日、17日に分けて記載致します。

●結論
アメリカは世界で唯一のエア・パワー大国である。先制攻撃による抑止力こそ、アメリアの戦略であり、アメリカの戦略文化の基本である。アメリカのエア・パワーは1【突破力】 2【テクノロジー】3 【攻撃力】によって構成されていると考える。

●エアパワーの4学派(奥山先生提唱)
1 戦略爆撃
武器だけで勝てる(マハン)。
都市爆撃も含む。
※本当に戦争を終わらせられるのかは議論の余地あり。

2 軍事ターゲット学派

3 リーダーシップ ねらいうち/首切り派
EX:サダムフセインだけ殺せばOK。
・特殊部隊が狙いを定めたうえで、無人航空機(UAV)で狙いうちする。そのため、インテリジェンスも絡んでくる。
無人航空機が役に立つ。当初アメリカの軍部が無人航空機の導入を嫌ったため、CIAが無人航空機を利用することになった。
・通常の戦闘機の操縦者は6年で2億円程度の育成費用が必要だが、無人航空機の場合はそれよりは安いとのこと。
・ゲーマーを操縦者に採用しているみたいで、軍人の組織でもまだ議論があるみたいだ。
無人航空機と通常の航空機との違いは
A強国に利用できるかは微妙で、非対称戦争には使える。
B情報をとって気すぎるため、分析に時間がかかる。
C仲間の人命が犠牲になることがない

4 政治シグナル派
あまり使われてない。ベトナム戦争のときに少し議論がでた。

●「即効性」がアメリカの戦争の流儀
戦略航空戦略は、戦争をいかに抑止し、また遂行するかという点に関するアメリカの志向を象徴するものであり、体現するものであった。長距離航空各攻撃力は、アメリカの戦略文化にほぼ完全に一致していた。1991年にイラクに対して行われた空爆に見られるように、即座に決着をつけるために最大限の武力を行使するのがアメリカの流儀なのである。
 
●リーダーの狙いうち/首切りよる抑止論
エリオット・コーエン 湾岸戦争によって「アメリカの指導者は、今や圧倒的なエア・パワーというこれまでの戦争の歴史にはみられない軍事能力を手にしている」 少なくとも西側諸国は敵に味方の意思を強要する手段が、「暴力」から「強制」(政策決定者に働きかける行為)へと移行している。エアパワーへの期待は、湾岸戦争での多国籍軍の実績、さらには、近年コソヴォアフガニスタンイラク戦争に裏付けられているのである。

●エアパワーは「占有力」も獲得しつつある
「ポストヒロイックウォー」と呼ばれる今日の状況からすれば、いかなる政府にとっても可能な限り陸軍力(海兵隊)や海軍力を投入しないほうが政治的に無難。だが、より重要なことは、技術の発展に後押しされたエア・パワーによって、「占有力」の概念自体が変化していることであると思われる。すなわち、従来の陸軍力に頼らなくても、事実上ある地域を占有することが可能になりつつある。例えば、湾岸戦争でのイラクの「飛行禁止区域」の設定とその監視活動は、今日のエア・パワーがある程度の「占有力」を備えていることを見事に実証している。逆に、今日の陸軍に求められていることは、必ずしもある地域の占有ではなくて、むしろ、戦争の後片付けになりつつあるようにも思える。
※これには反論があった。
航空機単独での勝利はやはり困難で、ユーゴスラビア戦争で勝利したくらいでうまくいっていないのではないか。

●【統合力が重要】エアパワーはランドパワーと協力することで相乗効果がある
戦争に勝利をもたらすものが、各軍種・兵科の「相乗効果」であることは、歴史の教えるところである。
コソヴォ紛争では限定的な効果しか発揮できなかった。実際、湾岸戦争の結果から確実に言えることは、エア・パワーを中核とする各軍種の備えた力の「相乗効果」こそが、多国籍軍の決定的な勝利をもたらしたということである。戦争におけるエア・パワーのウェイトは相対的なものにすぎない。問題の本質は軍事力の統合にあるのではないかという疑問に応える必要がある。実際、今次のイラク戦争では、事前にイラク国内に潜入した地上の「特殊部隊」による誘導があって初めて、エア・パワーは極めて効果的に機能したのである。

アメリカの戦略文化には先制攻撃とテクノロジーの信頼性が根強い。
1【先制攻撃】 アメリカの戦略文化に先制攻撃がある。
ステルス機を使えば死傷者をださずに攻撃もできる。そのため、議会の承認を経ずに軍部の判断で攻撃可能。偵察にも使える。パキスタンでは2004年から300回以上にわたって無人機から空爆しているのだが、この作戦はアメリカの議会でほとんど議論された形跡はない。

・ドゥーエの理論
「敵がチャンスを得る前に攻撃する以外に、敵の航空部隊が攻撃してくるのを防ぐ手段がない。敵の航空部隊を飛び立たせないようにするか、もしくはどのような航空活動を持ちわせないように妨害するのは、・・・論理的で合理的な考え方である。」

2【テクノロジー】エアパワー重視志向は、アメリカ国民の科学至上主義の反映している。 

ラッセル・ウェイグリー「アメリカ流の戦争方法」
アメリカ人の実用主義的な性質と核時代の複雑な技術によって育まれた戦略と政策の厳しい問題から目を逸らしてそれを技術的に解決しようとする」国家的な傾向があると指摘している。アメリカの流儀は、「政治上の見識」と「運営上の敏捷さ」よりも「技術」と「兵站」を重視してきたのである。

・コリングレイ:アメリカの調査計画は研究対象がアートであることを認めない。
過去数十年間にわたった「戦略」研究は、危機や戦争を引き起こす政治的動機に対するわずかな認識しかもたないままに、安定的抑止の必要条件を列挙してきた。戦力計画に関するアメリカの調査研究は、その研究対象がアートであり、科学ではないということを断固として認めようとしない。核兵器は、勝利を確実にするためよりむしろ抑止のために必要とされているが故に、「どれだけあれば十分か」という問いに対する答えは永遠に分からないままになるのである。

・エリオット・コーエン
「技術自体が今日の主要なエア・パワーの理論家であり、当面は発明が適応の母である」

・エアパワーはテクノロジーによって進化している。
無線技術(GPS等)と連動する最先端。ステルス機とサイバーテクノロジーの発展により先制攻撃が有効化。
面白いところでは、DARPAが小鳥の姿に擬せた偵察機を開発。空飛ぶロボット。

※反論
いまやテクノロジーの最先端はサイバーなので、エアパワーではないのではいかという反論もあった。

●3 【突破破壊力】
【3−1純粋に破壊を目的とする】「空軍力は純粋に破壊を目的とする点において、海軍力とも大きく異なる軍事力である」(シュミット)
核戦略の3つのうち2つは空軍。 
・1大陸間弾道ミサイル=核ミサイル(大気圏外を弾道飛行する弾道ミサイルと大気圏内を飛行する有翼の巡航ミサイル
・2長距離爆撃機 ・ドゥーエの理論「制空を得ることは勝利を意味する。航空部隊に対してそれ相応の重要性を与えなければならない。」飛行機乗りは戦術面では兵士と同じように他の軍事組織に支援を求め、戦略面では単独実行が念頭に置かれている。

【3−2 戦域(戦闘空間)が設定】空軍力によって戦域(戦闘空間)が設定され、その枠のなかで陸軍力が活動し、敵に最後の止めを刺すことになる。戦略爆撃の高い有効性を主張(ドゥーエ)。部分的に狙いを定めて攻撃する方法。エリア一体を攻撃する方法がある。

・ダグレスマクレガーの理論
1戦闘の開戦段階
・精密誘導爆撃によって、敵の神経網が切断。
・防空施設や大量破壊兵器など郡司的な拠点があらかじめ破壊。空軍、海軍だけでなく、陸軍(ロケット砲部隊、ヘリコプター攻撃部隊)も投入。

2浸透段階 
規模の小さな陸上戦闘グループが敵領土に複数の地点から浸透を開始する。EX、エアボーン部隊。
・偵察能力やスタンド・オフ攻撃能力を超えない範囲内に浸透を行い、空中偵察によって発見された敵の隙や脆弱点を攻撃する。
・その間においても空軍航空機、陸軍ロケット砲部隊やヘリコプター攻撃部隊は引き続き、攻撃を行い、陸上戦闘グループの攻撃前進に弾みを与える役割を担う。
・この段階で重要なのは「航空阻止」能力の維持。このような戦闘形態は、例えばGPS、精密誘導爆撃、戦場把握能力などによって可能となった。

●新たなパラドックス
その精密性が、戦争の犠牲者数を矮小化すべきという人類の期待を過度に高めた結果、爆撃自体に躊躇するという奇妙な現象。
今日の真の意味で「革命的」な現象とは、敵・味方を問わずより小さな犠牲でより大きな成果を早急に求めるという、この人類の期待値の上昇している。

●日本のエアパワーはどうか
戦略爆撃ができない。現場でリアリティが全くなく、想像力が働かない。
・対地攻撃はある。どちらも支持は空軍によるものだが、地上何mかまでが陸軍の管轄で、地上何m以上が空軍の管轄。
北朝鮮のミサイル担当も空軍。
・情報は横田基地に集約させる。
ドッグファイトはやらない。やったら負ける。ミサイルで勝負する。

戦争を前提とした体制ではないようです。もし敵国に攻撃されて、米国が守ってくれなければ為す術なしといったところみたいです。

統合運用のベースになるサイバーはどうかというと
・日本のサイバー運用
100億円の予算がついて、統合部隊がサイバー運用。運用するために、大学院に派遣して勉強することもあり。
社内インフラ:自分たちのインフラを守る。


●参考文献
「エア・パワー―その理論と実践 (シリーズ軍事力の本質) 」第1章 石津 朋之
「戦略の原点」第5章 ワイリー
「戦略原論」石津他編書